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1 承継問題の背景

事業承継問題は医療界でも例外ではなく、開業医の高齢化と後継者不在により医業承継問題が加速しています。平成30年の医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)によると、秋田県の診療所に従事する医師の54.1%が60歳以上であり、平均年齢は年々増加し61.7歳という結果が出ています(図-1、図-2)。

開業医の高齢化が進む一方で、以前は親子承継が一般的でしたが、現在は子どもが親の医院を引き継がないケースが増加しています。本会の調査(2021年2月)では県内の診療所の約6割で後継候補者が不在という深刻な問題となっています(図-3)。

このままでは開業医の高齢化と後継者不在により、廃業を選択する医院が増加すると考えています。

診療所に従事する医師数

(図-1)年齢階層別診療所に従事する医師数(秋田県)

イラスト:診療所に従事する医師数

診療所に従事する医師の平均年齢

(図-2)診療所に従事する医師の平均年齢(秋田県)

イラスト:診療所に従事する医師の平均年齢

後継候補者の有無と意思確認の状況(秋田県)

(図-3)後継候補者の有無と意思確認の状況(秋田県)

イラスト:後継候補者の有無と医師の確認の状況

2 貴医院に適した承継方法は?

医業承継には、親子(親族内)承継、後輩/知人への承継、第三者承継があります。
フローチャートで貴医院の承継を考えてみましょう。

イラスト:承継についてのフローチャート図

本会の調査によれば、後継候補者がいない背景・事情で最も多い理由が「医師の子どもや親族がいない」という結果が出ています。親族や知人に後継者がいなければご勇退されるタイミングで廃業という選択肢になりますが、廃業は、単にプライマリ・ケアの維持・継続のリスクだけでなく、地域社会のセーフティ・ネットの持続可能性のリスクにつながる由々しき問題です。

このため、医業承継問題を解決するための有効な手段の一つが第三者に医業を引き継ぐ第三者承継という方法と考えています。医業の第三者承継は、譲渡・譲受の当事者だけでなく、医療を受ける住民にも大きなメリットがあり、地域医療を守るための解決策といえます。

3 新規開業と承継開業のメリットデメリット

新規開業

メリット

  • 思い描く理想の医療を提供できる
  • 内装・デザインや間取りを希望どおりに設計できる
  • スタッフとの人間関係を一から構築できる

デメリット

  • 立地場所の選定や周辺調査など開業に向けた検討期間が必要になる
  • 初期費用プラス運転資金が必要となる
  • 開業直後の収支予測が立てにくい

承継開業

メリット

  • 費用負担の大きい土地・建物の不動産費用を抑えることができる
  • 医療設備やスタッフ、カルテを引き継ぐことができる
  • 地域で認知度がある

デメリット

  • 限られた物件の中からしか開業場所を選べない
  • 建物の老朽化による修繕費がかかる場合がある
  • スタッフとの良好なコミュニケーションが不可欠である

4 地方で開業という選択肢

写真:鳥海山風景

開業を考えるにあたり、医師が最も関心を寄せることが開業場所です。

地方での開業には「競合施設が密集しておらず患者を集めやすい」、「物価水準が低いため土地代や人件費などの固定費が都会よりも安い」などのメリットがあります。中でも、承継開業は、患者さんをそのまま引き継ぐことができるため、開業当初から一定数の患者数を見込めることや、新規開業に比べて初期投資が低く抑えられることなどから、新規開業よりも経営的にメリットがあると言えます。

開業を考えている先生は、開業地の検討にあたって、先生ご自身のライフスタイルの実現に向けた検討も必要です。四季折々の豊かな自然環境、子育てしやすい環境、災害や犯罪が少なく住みやすい生活環境の中で、地域に必要とされる医療を提供するという選択肢を一度は検討してほしいと思います。